東京地方裁判所 昭和52年(行ウ)287号 判決 1980年5月26日
原告 磐梯観光開発株式会社
被告 下谷税務署長
訴訟代理人 吉岡榮三郎 外三名
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が昭和四八年一二月二六日付で原告の昭和四六年一一月一五日から昭和四七年九月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 被告
主文と同旨の判決
第二当事者の主張
一 原告の請求原因
1 原告は不動産の売買及び仲介斡旋等を業とする青色申告法人であるが、原告の昭和四六年一一月一五日から昭和四七年九月三〇日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について原告がした確定申告及び修正申告、修正申告に対して被告がした過少申告加算税の賦課決定並びに更正(以下「本件更正」という。)及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定(以下「本件決定」という。)の経緯は別表一記載のとおりである。
2 しかしながら、本件更正には原告の所得金額を過大に認定した違法があり、従つてこれを前提とした本件決定も違法である。
よつて、原告は本件更正及び本件決定の取消しを求める。
二 原告の請求原因に対する被告の認否及び主張
1 原告の請求原因に対する認否
請求原因1の事実は認めるが、同2は争う。
2 被告の主張
(一) 原告の本件事業年度の所得金額は別表二記載のとおり八〇一二万三三二三円である。
(二) 過大役員退職金の損金不算入について
(1) 原告は昭和四七年八月二五日に退職した取締役大森保(以下「大森」という。)、同宮内国男(以下「宮内」という。)、同八重畑素弘(以下「八重畑」という。)及び監査役坂本一夫(以下「坂本」という。)に対する退職金各一五〇〇万円を未払金として本件事業年度の損金の額に算入した。
(2) しかしながら、右のうち大森については六〇万円、八重畑については三〇万円、宮内及び坂本については各四五万円を超える部分合計五八二〇万円は、法人税法第三六条及び同法施行令第七二条に規定する過大な役員退職給与に当たるというべきである。すなわち、
法人税法第三六条によれば、法人が退職した役員に対して損金経理により支給した退職給与の額のうち、不相当に高額な部分の額は所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととされているが、この場合の「不相当に高額な部分の金額」とは、同法施行令第七二条の規定により、その退職給与の額が当該役員の業務従事期間、退職事情、同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員退職金の支給状況等に照らし相当であると認められる金額を超える部分をいうものとされているから、原告の支給した役員退職金が過大であるかどうかについては、原告と同種の事業を営み、かつ、同程度の事業規模を有する法人の役員退職金の支給事例を抽出して、これら役員退職金の額が当該役員の退職時における報酬月額に勤続年数を乗じた金額にいかなる倍率(以下この倍率を「功績倍率」という。)を乗じたものであるかを求め、この功績倍率を基準として判断するのが前記法令の規定の趣旨からみて合理的というべきである。
そこで、被告が原告と同じ下谷税務署管内並びに原告と同種の事業を営む法人の比較的多い麹町、神田、京橋及び豊島の各税務署管内の同業種法人で資本金額が五〇〇〇万円以下の六〇四法人について調査したところ、その事業規模等が比較的類似する法人で昭和四六年一一月一五日から同四七年一二月三一日までの期間に役員退職金を支給していた法人(以下「比較法人」という。)は七法人で、その支給対象となつた役員は一三名であつて、その退職給与の支給状況及び功績倍率等は別表三記載のとおりである。これによれば、功績倍率の平均は一・九、最高は三・〇であり、右数値は本件更正当時の全上場一六〇三社の実態調査の結果から算出される功績倍率の平均が社長三・〇、専務二・四、常務二・二平取締役一・八、監査役一・六であるところからみて相当な基準といえるものである。
そこで、原告に最も有利となる比較法人の功績倍率の最高値である三・〇をもつて相当とし、この倍率に基づき前記退職役員に対する退職給与の相当額を算出すると別表四記載のとおり大森については六〇万円、宮内及び坂本については各四五万円、八重畑については三〇万円、合計一八〇万円となる。
従つて、各退職役員に支払われた退職金の合計額六〇〇〇万円のうち、右一八〇万円を超える五八二〇万円は過大な役員退職給与に当たるというべきである。
(三) 本件更正及び本件決定の適法性
原告の本件事業年度の所得金額は前記(一)記載のとおり八〇一二万三三二三円であるところ、本件更正は右金額の範囲内であるから適法であり、これを前提としてされた本件決定も適法である。
三 被告の主張に対する原告の認否及び反論
1 被告の主張に対する認否
被告の主張(一)のうち、原告が申告した所得金額は認めるが、その余は争う。
同(二)(1)の事実は認める。
同(二)(2)のうち、法人税法第三六条及び同法施行令第七二条の規定の内容が被告主張のとおりであること、原告の各退職役員の原告の業務に従事した期間及び最終報酬月額が別表四のとおりであることは認めるが、比較法人の退職給与の支給状況及び功績倍率が別表三のとおりであること、本件更正当時の全上場一六〇三社の功績倍率の平均が被告主張の数値であることは知らず、その余は争う。
同(三)の主張は争う。
2 原告の反論
(一) 大森、宮内、八重畑及び坂本は、原告の代表取締役大森国茂とともに、原告の設立前から約五年間にわたつて、得意先の開拓、広告方法の研究等の準備活動に奔走、尽力したのみならず、原告設立後も原告の営業活動等に貢献した。その結果原告は、別表五記載のとおり、設立後直ちに大きな収益をあげることができたのである。そこで、原告は各退職役員の右のような貢献を考慮し、原告の役員退職金規定に則り、昭和四七年八月二五日開催の臨時株主総会の決議に基づいて、各退職役員に対して一五〇〇万円の退職金を支給したのであつて、その金額は相当であるというべきである。
(二) 役員退職給与の相当性を判断するにあたり、被告主張のように同業種、類似規模の法人について算出した功績倍率を用いることは一般に是認されていないのみならず、仮に同業種、類似規模の法人の退職役員について算出した功績倍率を用いるとしても、原告のように設立後間もない法人の場合は役員の貢献の度合は未知であつて、それを報酬中に折り込むことは不可能であるから、退職金額の算定にあたつてはこの点を考慮すべきであるし、また、退職役員の法人設立前の準備活動の結果法人設立後直ちに大きな収益をあげた場合には、右準備活動も退職金額の算定にあたつて考慮すべきであるから、原告と同様に設立の日の属する事業年度において多額の利益をあげた法人の功績倍率と比較するのでなければならない。
四 原告の反論に対する被告の認否及び再反論
1 原告の反論に対する被告の認否
原告の反論(一)のうち、各退職役員が原告主張のような準備活動をしたこと及び同人らが原告設立後原告の営業活動等に貢献したことは知らず、各退職役員に対する退職金が原告の役員退職金規定に則り株主総会決議に基づき支給されたとの点は争う。
2 被告の再反論
(一) 原告の反論(一)に対して
(1) 原告が本件事業年度において売買した土地に関して原告の代表取締役らが不動産業者らと最初に接触した時期は、一番早いものでさえ昭和四五年九月であり、その余のものについてはいずれも原告設立日以後であるのだから、原告設立前の各退職役員の準備活動をもつて退職金額の算出根拠とする原告の主張はその前提において失当である。
(2) また、一般に役員退職金はその役員の職務執行に対する報酬の後払的な性格と過去の功労に対する報償としての賞与的な性格とを併有するとみられるところ、右のうち損金算入が認められるのは報酬の後払的な性格を有する部分だけであるというべきである。けだし、損金経理をした役員退職金のうち適正な額が法人の所得の計算上損金の額に算入されるのは、役員退職金の中に報酬(原則として損金算入、法人税法第三四条参照)の後払的な性格のものが含まれているためであり、役員退職金の賞与的な性格の部分は法人税法上役員賞与(原則として損金不算入、法人税法第三五条参照)と同じ取扱いをし、その損金算入を認めるべきではないからである。
ところで、原告においては、報酬の後払いとしては最大限原告と各退職役員との間に雇用ないし委任の関係が生じた昭和四六年一一月一五日(原告設立の日)まで遡及して賃金の支払不足額を考慮すれば足りるのであつて、原告の設立前の期間については各退職役員に対して原告は何ら報酬を支払うべき義務が存在しないのであるから、その期間に対応する退職金を支払わなければならないいわれはないのである。
従つて、仮に退職役員が原告設立前に原告にとつて有益な行動をし、原告がその貢献も考慮に入れて退職金額を算定したというのであれば、その部分は賞与的な性格を有するものとして損金の額に算入すべきではない。
(二) 原告の反論(二)に対して
(1) そもそも功績倍率とは最終報酬月額と勤続年数以外の退職金算定に影響を及ぼす一切の事情の総合評価と考えるべきものであり、それは退職役員の法人に対する功績の度合を係数化したものであつて、当該退職役員の収益に対する貢献の度合は、本来既に報酬月額中に折り込まれているのであるから、功績倍率に係数化される功績の度合とは、役員報酬に包含されていることを考慮してなおかつ退職金算定に当たつて考慮される功績の度合であり、法人の資本金、総資産価額、売上金額、公表利益金額など営業規模及び経営成績などの不確定な要素を総合したものというべきであるから設立一期目において多額の利益をあげた法人と比較しなければならないとする原告の主張はそれ自体失当であるのみならず、退職金額は最終報酬月額と勤続年数とに高い相関関係があることは従業員の退職金規定等がこれらを退職金額の算定基準として用いている例が多いことによつても明らかであり、このことは役員の退職金額を算定する場合にも適合するものであるから、原告と同様に設立一期目において多額の利益をあげた法人と比較しなければならないという理由はなく、原告と同業種、類似規模の法人と比較すれば足りるのである。
(2) また、原告は功績倍率の比較にあたつては各退職役員の原告設立前の準備活動も考慮すべき旨主張するが、法人設立前の個人の行為がその法人にとつて有益であつたがため何らかの報償を考慮する必要があるというのであれば、それは就任時の報酬に反映させるか、あるいはその行為に起因して特段の収益をあげた時期に賞与の支給をもつて報いるのが通常であり、退職時期の明らかでない遠い将来にこれを考慮しようとするのは社会情勢の変化が激しい現代の社会通念にはなじまないところであつて、そのように法人設立前の個人の行為を考慮して役員退職金を支給する例は認められないから、原告の右主張は失当である。
第三証拠関係<省略>
理由
一 請求原因1の事実及び原告が昭和四七年八月二五日に退職した大森、宮内、八重畑及び坂本に対する退職給与各一五〇〇万円を未払金として本件事業年度の損金の額に算入したことについては当事者間に争いがない。
二 そこで、右退職給与金額の相当性について検討する。
1 まず、被告は原告と同業種、類似規模の法人について得られた功績倍率を基準として退職給与金額の相当性を判断すべき旨主張するのに対し、原告は右方法は適切でない旨主張するので、この点について検討する。
法人税法第三六条は、法人がその退職した役員に対して支給する退職給与の額のうち損金経理をした金額で不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は所得の金額の計算上損金の額に算入しない旨規定し、これをうけて同法施行令第七二条は、右損金の額に算入しない金額は、法人がその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のその法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額とする旨規定しているが、右各規定の趣旨は、役員に対する退職給与が利益処分たる性格をもつことが多いため、一定の基準以下の部分は必要経費としてその損金算入を認めるが、一定の基準を超える部分は利益処分としてその損金算入を認めないというところにあると解されるところ、成立に争いのない乙第一号証によれば、株式会社政経研究所が昭和四七年六月二〇日現在で全上場会社一六〇三社及び非上場会社一〇一社を調査したところ、何らかの形で役員退職給与金額の計算の基準を有しているものが六八二社、そのうち右基準を明示したものが二六五社あつたが、右二六五社のうち一六七社が退任時の最終報酬月額を基礎として退職金を算出する方式をとつており、さらに、そのうち一五四社が最終報酬月額と在任期間の積に一定の数値を乗じて退職給与金額を算出する方式をとつていることが認められるのであるから、退職給与金額の損金算入の可否、すなわちその相当性の判断にあたつて原告と同業種、類似規模の法人を抽出し、その功績倍率を基準とすることは、前記法令の規定の趣旨に合致し合理的であるというべきである。
2 原告が不動産の売買及び仲介斡旋等を業としていたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一四号証によれば、原告の本件事業年度末の資本金が五〇〇万円であること、被告所部係官が麹町、神田、下谷、京橋及び豊島の各税務署管内において、原告と同業種の不動産業(建売業、土地売買業)を営み、役員退職の日を含む事業年度末の資本金が五〇〇〇万円以下の法人について昭和四六年一一月から昭和四七年一二月までの間の役員に対する退職給与の支給状況を調査したところ、役員に対して退職給与の支給があつた法人は調査件数六〇四法人のうち七法人で、支給を受けた役員は一三人であつて、その支給状況及び最終報酬月額、勤続年数(六か月以上切上げ)、功績倍率(小数点第二位四捨五入)は別表三記載のとおりであり、功績倍率の平均は一・九、最低は〇・九、最高は三・〇であることが認められる。
右認定の事実によれば、右比較法人の選定基準は不十分のきらいがないではない(事業規模が類似する法人を抽出するには資本金額だけではなく総資産額、売上金額等も選定の基準とするのが望ましい。)が、前掲乙第一四号証によれば、抽出された七法人の期末総資産額及び売上金額を原告のそれと比較すると前者は〇・六倍(A社)ないし一〇・八倍(G社)、後者は〇・四倍(F社)ないし一一・八倍(G社)であつて、ばらつきが大きいものの、これらの金額と功績倍率の大小との間には顕著な相関関係は見出し難いのであり、従つて少くとも右比較法人の功績倍率の最高値を基準として退職給与金額の相当性を判断する限りにおいては右選定基準の不十分さの故に右判断の合理性が失われるものではない。そして、抽出された比較法人及び退職役員の数も資料の客観性を担保するに足りるものであるから、右退職役員の功績倍率の最高三・〇を基準として原告の退職役員に対する退職給与の相当性を判断することは合理的であるというべきである。
ところで、原告は、原告のように設立直後の法人の場合は役員の貢献の度合が未知であつて、それを報酬中に折りこむことは不可能であるから退職金額の算定にあたつてはこの点を考慮すべきであるし、また、退職役員の法人設立前の準備活動の結果設立直後から大きな収益をあげたような場合は右準備活動も退職金額算定の要素とすべきであるから、功績倍率の比較にあたつては原告と同様に設立の日の属する事業年度において多額の利益をあげた法人の功績倍率を採用すべき旨主張する。
しかしながら、前記大森ら退職役員の設立前の準備活動によつて原告が設立直後から多額の利益をあげえたとの原告主張事実を認めるべき的確な証拠は存在しないのみならず、一般に設立直後の法人においては役員の貢献の度合を正確に報酬に反映させることができないため功績倍率が高くなるということを認めるに足る資料は何もないし、また、退職役員の法人設立前の準備活動は、通常報酬或いは賞与の金額を算定する要素とはなりえても退職給与金額算定の要素とはならないのが通常であると解すべきであるから、前記法令の規定の趣旨に照らし、功績倍率の比較にあたつては右準備活動の有無を考慮する必要はないというべきである。従つて、原告の主張は失当である。
そこで、当事者間に争いのない各退職役員の最終報酬月額及び勤続年数(いずれも一年に満たないが一年に切り上げる。)と前記比較法人の功績倍率の最高三・〇に基づき退職給与額を算出すると、大森は六〇万円、宮内及び坂本は各四五万円、八重畑は三〇万円となるから、原告が役員退職給与として損金に計上した六〇〇〇万円のうち右金額の合計である一八〇万円を超える五八二〇万円は不相当に高額な部分に当たるというべきである。
3 なお、原告は、退職給与金額は各退職役員の原告設立前の準備活動及び設立後の営業活動等による貢献に見合う相当な額であると主張するが、右主張は抽象的であつて到底前記認定を覆すに足りないから採用できない。
かえつて、原告代表者尋問の結果中には、原告は大森国茂が昭和四六年一一月、弟の大森、妻の甥である坂本、妻の姪の夫である宮内、その他八重畑らの協力を得て設立したものであるが、翌四七年七月末ころに至り、右大森ら四名は原告が設立一期目にして相当な利益をあげ得る見込みであるのを看て取り、大森国茂に対し、独立して事業をやりたい旨及びそれには自分たちの貢献を考慮して二〇〇〇万円宛払つて貰いたい旨要求するに至り、結局右四名の退職給与金は各一五〇〇万円と定められたものであるとの趣旨の部分があり、仮にそのような事情があつたとしてみても、原本の存在及び成立に争いのない乙第一二号証、第二四号証及び原告代表者尋問の結果によれば、原告を退職した大森、宮内らが中心になつて磐光開発株式会社を設立したが、右磐光開発と原告は昭和四七年八月一〇日付で右磐光開発が原告所有の不動産を原告の契約書を使用して売却するが、売買代金は全て原告に入金し、原告は右磐光開発に一定の手数料を支払うほか、右販売に要する広告費及び雑費は原告の負担とするという内容の土地委託販売契約を締結したことが認められるから、右磐光開発は実質的には原告の販売部門にすぎないと認めるのが相当である。右認定の事実に、当事者間に争いのない各退職役員の退職給与金額が最終報酬月額、役員在任期間の相違にかかわらず均等であること、しかも右の金額から功績倍率を計算すると七五ないし一五〇という異常な高率であり、また原告の本件事業年度の申告所得金額は二一九二万円余であるから、右退職給与金の合計額は、退職がなかつたと仮定した場合の原告の本件事業年度の所得額の実に四分の三にも達しようという高額なものであること、等をあわせ考えれば、原告の各退職役員に対する退職給与の支給は多分に利益処分たる性質を有していたと認めるべきであり、前記1で判示した法人税法第三六条、同法施行令第七二条の趣旨に照らし、右退職給与全額の損金算入を認めることは到底できないというべきである。
三 当事者間に争いのない原告の本件事業年度の申告所得金額二一九二万三三二三円に前記二3で判示した役員退職給与の損金不算入額五八二〇万円を加算すると、原告の本件事業年度の所得金額は八〇一二万三三二三円となる。
従つて、右金額の範囲内でされた本件更正は適法であり、これを前提としてされた本件決定も適法である。
四 よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 藤田耕三 原健三郎 北澤晶)
別表一 (単位 円)
区分
年月日
所得金額
法人税額
過少申告加算税
確定申告
47・11・30
一〇、三七七、〇九五
三、二七九、九〇〇
―
修正申告
48・12・18
二一、九二三、三二三
七、七五〇、二〇〇
―
加算税の賦課決定
48・12・26
―
―
二二三、五〇〇
更正及び加算税の賦課決定
48・12・26
六五、四二三、三二三
二三、四七七、五〇〇
七八六、三〇〇
別表二 (単位 円)
番号
区分
金額
1
原告が申告した所得金額
二一、九二三、三二三
2
過大役員退職金の損金不算入額
五八、二〇〇、〇〇〇
3
所得金額(1+2)
八〇、一二三、三二三
別表三~五<省略>